なぜT・K君は国立大学の医学部に合格できたのか?
2022年11月30日

なぜT・K君は国立大学の医学部に合格できたのか?

センター国語で90%超えが至上命題!!

T・K君は、2019年の4月11日に島根県から当志学塾に入塾しました、夏までの間は高速バスでい、夏以降は東京に居移して通塾し、今年、遂に国立の鳥取大学医学部に合格を果たしました。
では、なぜ今年、彼は国立大学医学部に合格できたのでしょうか?結論は簡単です。当塾での1年間は徹底的に弱点を潰したからです。以下がT・K君の去年と今年のセンター試験の科目別得点の比較です。

センター試験点数比較!!

2019年度 2020年度
英語(リスニング除く) 173 182(+9)
数学Ⅰ・数学A 95 93(-2)
数学Ⅱ・数学B 75 70(-5)
国語 評論・小説 66 87(+21)
  古文 30 45(+15)
  漢文 50 50(±0)
  合計 146 184(+38)
物理 90 90(±0)
化学 81 80(-1)
日本史B 95 94(-1)
合計点 755 793(+38)
  センター試験成績通知書 自己採点

お判りでしょうか?彼は理系科目に関しては去年までにほぼ完成した力を持っていたのです。ということは彼のような受験生にはわかっている単元を予備校の授業で重複して受けることは無駄だったのです。必要なのは弱点をピンポイントで潰すことでした。

ですから、当志学塾では入塾の面談ヒアリングの時に彼の学力の現状分析を徹底的に行いました。その結果、英語では英文和訳力とと英作文力が弱いこと、国語ではセンター試験の答えの根拠の探し方がアバウト過ぎることが判明しました。それを当志学塾では1年間掛けて徹底的に潰したのです。

センター試験点数比較!!

T・K君の国語全体に関していうと、昨年の成績を見ればおわかりのように、漢文はほぼ仕上がっていましたが、古文・小説には明らかな弱点を抱えており、評論は正解の導き方に詰めの甘さがありました。

漢文

ところが、一見仕上がっているように見えた漢文も、過去問をやらせていくと得点に波があり、2~3題落として30点台しか取れない時があることが判明しました。原因に心当たりがあったので「漢文の本文は普通何回読む?」と訊いたところ、案の定「1回です」という答えが返って来ました。「それじゃダメだよ、最低2回、時間があったら3回読んでくれ」というと「そんなに読んでいては漢文に時間が取られ過ぎてしまうじゃないですか?」というので「だって漢文で3題落としたら90%超えは無理でしょ。それでは意味ないじゃん」と言い聞かせました。

なぜ複数回読む必要あるのでしょうか。センター漢文の場合は前半に具体例(猫の親子の話とか、一晩中、ネズミの物音に驚かされたとか)があって、後半に筆者の主張が展開されるわけですが、その具体例と主張の関係が十分に捉えられていないとポロッポロッと点を落とすのです。T.K君が漢文で2題落としたのでは到底90%超えは無理です。そのために複数回読んで、何のための具体例なのか、筆者の主張との関係をしっかりとらえてから解くようにと指示を出したのです。本文がきちんと読めていれば設問も楽に解けますが、本文が読めていないといたずらに設問で時間を取られて、かえって時間を食ってしまうのです。その後はしっかりと複数回読むようになったために、本文の主旨を捉えずに設問に向かって点を取りこぼすということはなくなりました。

古文

古文は文法は仕上がっていました。細かい点を気にすればキリがないとは思いますが、T.K君はセンターレベルの文法問題では点は落としませんでした。古文も話の全体像がわかっていれば、後は傍線部の前後からしっかりと根拠を探せばいいので、それほど難しくはありません。ただし、最近では短くなっていたとはいえ、センター古文は基本的に長文(ほぼA42枚)なので、文法力も単語力も弱い受験生には取っては、読むのも一苦労の上に、時間的な制約もきついので、なかなか高得点は難しいです。

あと、T・K君が苦にしたのは和歌の処理です。これはほとんどの受験生も同じです。では、なぜみんな和歌で苦しむのでしょうか?答えは簡単です。みんな和歌自体の解釈にこだわるからです。ところが前後の文脈に無関係な和歌が出されるはずはなく、文脈を追えば和歌の大意はつかめるのです。和歌の問題は心情説明ですから、ちゃんとその和歌の成立事情(誰が、どんな状況で、どんな心情を和歌に詠んだか)を前後の文脈からとらえていれば和歌を詠んだ人物の心情はきちんと読み取れます。

そうすると簡単に得点できるのです。和歌問題の答えの根拠は本文にあるということです。このことがわかってから、T.K君は古文で失点することはなくなりました。その甲斐あって今年のセンターでは45点をマーク。昨年から15点アップを達成しました。

小説

T・K君が一番苦しんだのは小説でした。それも登場人物の心情説明などで点を落とすのではなく、問1の「戦きながら(2018)」「間が悪かった(2013)」「躍起になって(2011)」「みもふたもない(2010)」などの慣用句が弱かったのです。これには弱りました。これらはいわゆる受験勉強で身に付くものではなく、幼少期、青少年期を通した読書体験といったものから自然に身に付けるものだからです。

意外なところで「えっ?」というような失点をするので、これをなくすためにその都度、国語辞典で調べさせたり、類義表現や反対表現などを強化したり。しかし、最終的には知っているかいないかの文脈では推測できない問題なので苦労しました。実際、今年のセンターでも問1の(イ)「重宝がられる」で失敗し、5点を落としてしまいました。彼は理系科目は抜群にできるサッカー少年だったので、そこまで求めるのは酷とも思えますが、やはり国立大学医学部を狙って、センターで90%超えを目指すとなると、読書体験を積んだり、高校の教科書の小説などに馴染んだりして、普段から慣用表現に慣れておかねばなりません。

評論

さすが理系だけあって論理的文章である評論は得意でした。センター評論は答えの根拠となる個所を正確につかむことが肝要ですが、ただ、T・K君はこの答えの根拠となる個所を探し出して絞り込むのに時間が掛かり過ぎていました。「根拠となる個所を迅速に的確に掴んで選択肢を処理する」これがセンター評論を解く際の大鉄則なので、根拠探しに時間を取られ過ぎると、時間的にきつくなってしまいます。そこで私が彼に叩き込んだのは①「傍線部分析」と②「設問文分析」③「選択肢の鉄則」です。これは現代文で極めて効力を発揮する方法ですが、それを私が古文向けにアレンジしたものです。

これにより迅速に的確に答えの根拠を探し、選択肢の鉄則によって選択肢の処理が可能となります。(後に詳述)以上によりT・K君は答えの根拠探しが迅速的確となり、今年のセンターの評論では見事50点満点をマークしました。

あと、彼の評論読解力に寄与したのは駿台の霜さんの『現代文読解力の開発講座』でしょうか。これで、更に緻密に評論を読む力が形成できました。この『現代文読解力の開発講座』は他の塾生にも使わせましたが、その威力は破壊的で、皆、MARCHレベルの評論は苦も無く解いてしまうようになりました。古文の力が付き評論を読みこなす力も付くと国語は得点科目にすることができます。

以上によって、徹底的に国語を強化したT・K君は今年の国語で184点(92% 前年度+38点)をマークし、国立大医学部合格に大きく前進しました。国立大医学部に合格するためにはセンター国語が鬼門になりがちですが、彼は見事にそこを突破したのです。

私立医学部受験では何を強化したか

英語

国公立医学部を第一希望にしてきたT君は、センター対策はほぼ完成、あとはどれだけ取りこぼしを防いで190点台を目指すか、という段階で入塾してきました。ですのでお引き受けした時点では、センター試験と国公立の二次試験の対策のバランスをどう取っていくかが勝負かと判断。私立医学部受験は視野に入っていませんでした。しかし話を聞くと、「私立の医学部も数校受験する」、「そのうちの国際医療福祉大学は去年も受けたが、英語は何を言っているのかわからなかった」とのこと。それはまずい!と私立医学部対策もスタートしました。

私立医学部の英語は「時間内で解き終わるのが難しい分量」「医系テーマの英文読解」が特徴です。T君の場合、分量に対処する時間配分や解法よりもまずは「医系テーマの長文」を読みこなすことから始めました。T君は物理履修でしたので、生物履修者ならあっさりとクリアする内容に四苦八苦。そこで、「頻出テーマ」「医系単語」「背景知識」の習得を目指し、「私立大医学部の英語(英文読解)」₍教学社₎、「医学部の英語」(旺文社)を解きまくりました。T君は国公立の二次対策として英文和訳や英作文の対策は行っており、そのおかげで文の構造把握には問題はありません。とにかく「医療系のテーマの英文に慣れる」ことを目標に問題演習を重ねました。前述の問題集が終わる頃には医系テーマの英文に苦手意識はなくなっていました。市販の問題集の後は「福島県立医科大や奈良県立医科大、滋賀県立医科大」といった単科医科大の過去問演習も数多く行い、医療系テーマの長文読解演習をさらに深めると同時に国公立の二次試験対策も進めていきました。

残るは「解き終わらない分量をいかに対処するか」です。それに関してはT君の場合、はっきりと問題点がわかりました。内容一致問題に時間がかかるのです。「選択肢が20ほどあり、そのうち本文の内容に合っているものを5つ程度選べ」というものが苦手で、時間を意識すると正解度が下がってしまいます。これは私立大受験には致命傷になるため、医学部以外の学部の過去問も数多く扱いました(早稲田を筆頭にMARCH等)。問題演習の多さは結果に必ず現れてきます。T君は私立大だけでなく国公立の二次試験の対策を本格的に始める時には当初の弱点はすっかり消えていました。

私立医学部の受験日はセンター試験の数日後から始まります。センター試験→私立医学部→国公立の二次試験、とアッという間にやってきます。T君は受験する私立大を絞り、過去問を少なくとも3年から5年分は解きました。そして出題内容・傾向等をつかみ、得点アップするには何が必要かを把握してその対策を講じました。最後には二人で解く問題の順番を決め、時間配分を決め、時間が足りない場合にはどの問題をどの程度捨てるかまで話し合いました。数十年の講師生活で、あれほど過去問に向き合ってくれた生徒さんは数多くいません。ですのでT君の私立大の結果は私にはやっぱり!。至極当然の結果でした。それくらいT君はやってくれました。