塾・予備校選びのヒント
2022年12月01日

なぜ大学に行くのか? ーモチベーションの創出と維持ー

「なぜ大学に行くのか?」これは難しい問題です。なぜなら大学受験の場合は中学受験とは違って「ここで頑張れば6年間は入試を受けなくてよいのよ」「いい中学に合格していい大学に行けばいい生活ができるのよ」的なニンジンのぶら下げには釣られないからです。「なぜ大学に行かなければならないのか?」私も高校時代に悩んだものです。

悩んだというよりその理由が見つからず、戸惑っていたというのが正直なところです。昔気質の父親は高校生は勉強するのが当たり前という感じで「勉強しろ!」としか言いません。母親は優しくても大学に進む意味をしっかりと語ることはできません。私も県下1,2の進学高校に入ったので「大学に行くのは当たり前」とは思っていながらも、そのしっかりした根拠までには考えが至りません。そうした中で部活(テニス)に入れ込み学業は疎かとなり、成績は入学当時から低迷を続け、勉強しなければと思った時にはすでに手遅れで、現役時代はあえなく全敗となりました。

今年、当塾で英語を受講して、昭和大学の医学部の後期試験で80倍という倍率を突破して合格されたY・Y君のように初めからお医者さんになると心に決めて、そのために高いモチベーション維持してそれを実現されたのは見事だと思いますが、こうしたケースは稀です。高校生の段階では将来自分の就きたい職業が明確になっている方が稀で、多くの高校生は自分の将来に対して漠然とした期待と不安を抱いたままなんとなく過ごしているというのが実態です。

 

自分の就きたい職業が決まっている人はたまたま自分の身の回りにそうした職業についている親や親戚や知人がいて、そうした職業(医師、弁護士、教師、エンジニアetc)にあこがれを持っていたというケースが多いように思われます。

そうでない場合がJリーガーになりたいとかシンガーになりたいとか俳優になりたいとかいうような非現実的な願望は別にして、しっかりした職業観に基づいて将来就きたい職業を決めている高校生はそんなにはいないと思われます。つまり、高校生にとって実社会はまだリアルに感じられる世界ではなく、親の庇護のもとで夢見がちにのほほんと過ごしているケースの方が多いのです。こうした場合、将来どういった職業に就くためにどういう大学に入るかはリアリティをもちえません。「今頑張っておかないと将来が大変なことになるのよ」とお母さまが言ってもピンとこないのです。では、どうしたらいいのでしょう。

お父さん(お父さん的お母さん)の登場!

「なぜ大学に行かなければならないのか?」やはりこの問いにはお父さんの関与が必要と思われます。

今の時代はシングルマザーも普通におられますので、この場合はお父さん的役割を果たしているお母さんになります。つまり、父親or父親的存在がお子さんと実社会との懸け橋になれるからです。

私の高校時代を振り返っても、昔気質の父にそれを求めるのは酷と思いつつも、もし、父親が「幸則、お前は将来何になりたいのだ?」私「政治家か弁護士かジャーナリスト」父「そうか、それなら大学に行って専門的知識を付けなければいけないな。政治家なら早稲田の政経か、弁護士なら中央か早稲田の法科かな。ジャーナリストなら早稲田の一文かな。いずれにせよ、父さんがいつまでもお前の面倒を見ることはできないのだ。

おまえも将来は何らかの職業について自立しなければならない。そのためにはやはり大学に行って好きな職業に就けるようにしなければならない。人間は嫌いなことは仕事にできないものだ。嫌いでは努力をしようという気が起こらない。もし、自分に合っていない職業に就いたりしたら会社に行くのが嫌でうつ病になってしまう。やはり、好きなことを仕事にするのが一番だ。そのためには自分が将来就きたい職業をいくつか考えて、どういった大学に進学するのがよいか研究してみることだ。

親ができるのはそのために教育費と学費を出してやることぐらいだ。自分のために考えてごらん」と言われれば、テニスにかまけて高校の授業を疎かにすることはなく、真剣に自分の将来を考えて勉強にまじめに取り組んだと思われます。

高校生の私にも漠然とした将来の職業候補はあったのです。それに竿を差す(この言葉はよく誤用されますが、「邪魔をする」ではなく「勢いをつける」ですね)ような父親の助言があったなら大学受験に向けた姿勢も変わったと素直に思います。父親や父親的存在が社会との接点を子どもに教えることができるのです。

いまは昔のように親が一方的に自分の意向を子どもに押し付けるという事は少なくなったとは思いますが、やはり、中学生のころから職業に就いてお子さまと話す機会を設けて、そうした機会を通して、この社会の仕組みを少しずつお子様に理解させ、自分がこの社会の中でどのように生きていこうかというきっかけを作ることが大切だと思います。また、お子さまの意向も年齢や時期によっても変わってきますので、少し時間をおいてから尋ね直してみてみることも必要だと思います。 いずれにせよ内発的動機に支えられない学習は集中力を生まず、継続もしませんし、目的を持たずに努力することは不可能です。勉強の目的を持てないでいるお子様の態度を見て「お前は意志が弱い」などと一気に子どもの意欲を喪失させるような小言は言わないことが肝心です。